『淋しいのはアンタだけじゃない』感想~聴覚障害・耳鳴りの実態がわかる漫画~

漫画・コミックエッセイ
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こんにちは。

あやぞぅです。

 

久し振りに、この本すごい!と思う漫画に出会ったので、ご紹介します。

それは、『淋しいのはアンタだけじゃない』という漫画です。

聴覚障害とは何か?をテーマにした、ルポ漫画です。

実は内容はよく知らないまま、たまたま手に取り読んだのですが…

非常に興味深かったです。

 

以前、こんな記事も書きましたが…

キンキの堂本剛くんも経験した突発性難聴について。私の体験談をまとめてみた。

私自身、突発性難聴の経験があるからという面もあると思います。

わかるわかる!と思うことなども多かったので…

(私自身は日常生活に支障がない程度の難聴&耳鳴り持ちですが)

 

そんなことも踏まえつつ、この漫画のざっくりとした内容と感想を書いてみたいと思います。

なお、感想を書く都合上、若干のネタバレは含みますので、ご理解の上、お読み下さい。

 

 

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『淋しいのはアンタだけじゃない』のざっくりとした内容

『淋しいのはアンタだけじゃない』は、小学館のビッグコミックスペリオールで連載されていたルポ漫画です。

作者は、吉本浩二さんという漫画家さんです。

さまざまな聴覚障害者や耳鼻科医などに取材を行い、知っているようで知らない聴覚障害の実態について、ひもといている漫画です。

また、2014年頃に、ゴーストライター騒動で話題となった佐村河内氏にも取材を行っているのもこの漫画の大きな目玉となっています。

(聴覚障害がある作曲家として注目を集めていた佐村河内守さんの作品が実はゴーストライターによるもので、聴覚障害についても虚偽だったのではないかとされた騒動です)

 

聴覚障害というと聴覚に障害があり障害者手帳を交付されている人、手話を使っている人などをイメージすると思いますが、この漫画では障害者手帳交付の対象外である中程度の難聴者についても取り上げているのが大きな特徴です。

また、ほぼ全ての聴覚障害者・難聴者が経験している耳鳴りについても、かなり深く掘り下げています。

 

具体的には、

・中途失聴者への取材

・難聴者への取材

・手話通訳者への取材

・ゴーストライター騒動の佐村河内守さんへの取材

・耳鼻科医(難聴や耳鳴りを専門としている医師)や言語聴覚師への取材

などにより構成されています。

 

耳鼻科医に関しては、自身も聴覚に障害を持つ医師への取材があったのも印象的でした。

 

また、この本は、単に聴覚障害者からの取材内容を漫画にしているのではなく、取材する側の様子や心情も含めたルポ漫画になっているというのも大きな特徴です。

漫画家さんと編集者さんも漫画内に登場するのですが、2人が悩み迷いながら取材を進めていく様子も描かれていて、その部分も非常に読み応えがありました。

 

『淋しいのはアンタだけじゃない』の感想

以下からは、『淋しいのはアンタだけじゃない』についての感想を書いてみたいと思います。

 

聴覚障害や聴覚障害者の実情をかなり深く掘り下げた漫画

この本を読んで、まず率直に思ったのは、過去にここまで聴覚障害や聴覚障害者の実情について深く掘り下げた作品ってないんじゃないかな?ということ。

冒頭にも書いた通り、私は突発性難聴の経験者であり、ひどい耳鳴りに苦しんだ経験があります。

耳が聞こえなくなったらどうしよう…と思ったことがある分、そういった経験がない人よりは耳の聴こえについての関心・知識はあると思っていました。

でも、これを読んだら、そうなんだ…全然知らなかったな…と思うことだらけでした。

勿論、聴覚障害の当事者ではないので、当然と言えば当然なのですが…

でも、突発性難聴で悩んでいた時に得た知識に関しても、えっ?そうなの?と思うことがいくつもありました。

 

特に、中程度とされるレベルの難聴の人の実態については、驚くことが多かったです。

この漫画の中に何人か出てきますが、たとえば50デシベルくらいの中程度の難聴の場合。

耳鼻科的な見解では、静かなところであれば会話が出来るレベルとされ、障害者手帳の交付の対象外なんですよね。

(障害者手帳の交付は70デシベルからです)

でも、実際は、日常生活で支障をきたすことがとても多く、実態よりも軽いものとして捉えられてしまっているというのが現状のようです。

感音性難聴の場合、単に小さな音が聴こえない、大きくすれば聴こえるという話ではなく、大きな音であっても理解できる言葉として入ってこないため(独特の聴こえ方になる)、日常生活に支障が出てしまうんですよね。

感音性難聴がどんなものかはわかっていたつもりでしたが、実際50デシベルでもそれだけ困るというのは知らなかったな…というのが率直な感想でした。

 

また、実体験として辛さがよくわかっている耳鳴りについては、そうそう!そうなんだよ!よくぞそこにスポットライトを当ててくれた!という気持ちにもなりました。

耳鳴りの辛さや実情(どんな音が鳴っているか、など)については、こういった作品で取り上げられることがないどころか、周りの人や耳鼻科医にすら理解してもらえることは少ないです。

それをここまで詳細に描いてくれるとは!と思い、耳鳴り持ちとしては嬉しかったです。

 

聴覚障害とは何なのか?どう伝えるべきか?について試行錯誤する作者たちの姿が純粋に興味深かった。

上にも書きましたが、この漫画は、単に、『聴覚障害とはこういうものです』と取材した結果が書かれている漫画ではなく、聴覚障害とはどういったものか?ということに迫るために取材を進めていくプロセスについても書かれている漫画です。

取材を続けながら聴覚障害についての理解を深めつつ、でも時々わからなくなったり、どう取材をするべきか、どう漫画にするべきか、悩んだり…

そんな様子も描かれていて、それが純粋に興味深かったです。

そして、聴覚障害者や聴覚障害そのものに対して、いかに真剣に向き合っているかということも伝わってくる作品でした。

 

特に印象的だったのは、難聴の人の音の聴こえ方をどう漫画で表現するか悩んでいるシーン。

漫画の吹き出しの表記の仕方が、取材を進めるごとにどんどん変わっていくんですよね。

より実際の聴こえ方が伝わる表現にしよう、と。

そこまでこだわるんだ…と正直思いました。

でも、そういったシーンがあることで、難聴者の音の聴こえ方がいかに複雑か、いかに健聴者とは異なるかがよく伝わってくるなとも思いました。

漫画家さんと編集者さんの想いの強さを感じるシーンでした。

 

 

また、佐村河内さんの件に関しても、いわゆるゴシップを追いかけるような取材ではなく、彼の抱える聴覚障害の実態とは何なのか?をとらえるために行われている取材となっており、その点も良かったです。

佐村河内さんの取材をしていると言っても、あくまでも主題は聴覚障害なんですよね。

 

あの騒動で、『本当はまぁまぁ聞こえるのに、聞こえないふりをした嘘つき』ということになってしまったけれど、佐村河内さん自身は『以前より聴力は上がったようだが、依然として聞こえないままだ』と主張している。

マスコミの指摘通り、彼が嘘をついているだけであって、本当は聴こえているのか?

それとも、検査結果と実際の聴こえ方には乖離があり、本当に聴こえないのか?

河内さんへ取材をしつつ、他の聴覚障害当事者や耳鼻科医などへの取材から得た情報と合わせて、聴覚障害とは何か?を探っていこうとする過程が描かれているという感じです。

そして、佐村河内さんに対する漫画家さんと編集者さんの向き合い方も、とても真摯なものでした。

最初は好意的に取材に応じてくれた佐村河内さんでしたが、うまくお互いの意向をすり合わせることが出来ず、最終的には志半ばで取材に応じてもらえなくなってしまうのですが…

佐村河内さんの聴覚障害がどういったものだったのか?という結論は出ないまま漫画が終わってしまうのは読み手としては残念という感じなのですが…

取材を進めていくプロセス自体に読み応えがあり、興味深かったです。

 

そして、その過程が描かれていることによって、聴覚障害と一言で言っても、いかに個人差があるか、いかに解明されていないか、いかに問題点を抱えているか、ということが伝わってくる作品になっているなとも思いました。

 

耳鳴りで悩んでる人には是非1回読んで欲しい。

この本は聴覚障害がテーマになっている本ですが、耳鳴りについてもかなり深く掘り下げられている漫画となっているので、耳鳴りで悩んでいる人には是非一度読んで欲しい漫画だと思いました。

 

理由は、

①耳鳴りで苦しんでいるのが自分だけじゃないことがよくわかる。

②周りからは理解されにくい耳鳴りの辛さがかなりわかりやすく表現されているので、人に伝える際にも役立つ。

③耳鳴りのメカニズムを知ることが出来る。(漫画内の耳鼻科医の話によると、耳鳴りのメカニズムを知るだけで耳鳴りが軽減するケースもあるそうです)

④耳鳴りや聴覚障害について真剣に研究している人がいることがわかる。実際に研究が進んでいることにも希望がわく。

といったところです。

 

…耳鳴り持ちの私自身が思ったことを並べてみただけではあるので、そう思わないという人もいるかもしれませんが…

それでも、ここまで耳鳴りのことを取り上げている作品ってないと思うので、是非一度読んで頂きたいと思います。

 

特に、④については大きいのではないかなと思います。

耳鳴りに悩む人の多くは、病院に行って診てもらってもコレといった治療法がなく、耳鼻科医から「慣れるしかない」などと言われて絶望的な気持ちになる…という経験をしていると思います。

(この話は漫画の中にも出てきますし、実際に私も経験しています。)

耳鼻科の中でも、難聴や耳鳴りに関する研究はまだまだ進んでいないのが現状…

それは漫画の中にも描かれているのですが、でも数は少ないけれど、耳に関する研究を日夜行い、耳鳴りの患者と真剣に向き合うお医者さんがいることも漫画を読むとよくわかるんですよね。

耳鼻科の先生に対する不信感や絶望してしまう気持ちが少しは軽くなるのではないかなと思います。

さらに、最新の耳鳴りの治療法についても描かれているので、実際の治療にも活かすことが出来ると思います。

 

また、ご自身も難聴を抱えるお医者さんが2人出てくるのですが(1人は耳鼻科の権威、もう1人は病理医学の権威)、そのお2人の話もすごく印象的でした。

耳鼻科と病理医学の専門医でありながら、聴覚障害や耳鳴りを抱える辛さもよくわかっているお医者さんがいる…しかもその世界のトップクラスのお医者さん…

それってとても大きいと思います。

 

 

私は、耳鳴りのために死ぬほど悩んでた時期に、この本読みたかったなと思いました。

ですので、同じ気持ちの人には是非読んで頂けたらなと思います。

まとめ

以上、『淋しいのはアンタだけじゃない』のざっくりとした内容と感想についてでした。

この漫画の内容はかなり濃く、この記事では全く触れていない部分も多いので、興味がある方は是非実際に読んで頂くことをおすすめします。

 

小学館のHP上で、試し読みも出来ますので、こちらも合わせてどうぞ。

淋しいのはアンタだけじゃない|小学館HP

 

 

ちなみに、この漫画は全3巻で完結、電子書籍も出ています。

電子書籍の3巻↓

個人的には、佐村河内さんへの取材も途中になってしまってますし、是非続編も期待したいと思うところではあります。

 

 

読んで頂いてありがとうございました。

 

 

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コメント

  1. おはようございます。
    自分も管理人さんと同じように耳鳴り持ちです。今から10年以上耳鳴りに悩まされている自分にとっては『淋しいのはアンタだけじゃない』という漫画は一度読んでみたいほどありがたい存在です。情報公開有難うございます。

    • あやぞぅ より:

      しゃんしゃんさん>
      コメントありがとうございます。
      しゃんしゃんさんも耳鳴り持ちなんですね。
      10年以上というのも同じです~
      『淋しいのはアンタだけじゃない』は、耳鳴り持ちの人にとっても、わかるわかると思える本だと思うので、是非読んでみて頂ければと思います。
      そういう本ってなかなかないですし、面白かったですよ。

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